商品やサービスの売り上げを伸ばすために、新規顧客との接点を増やしたいと考えている方は多いのではないでしょうか。
顧客にアプローチする有効な手段として近年、WebマーケティングやWeb集客を支援するツールやノウハウは豊富に提供される一方、競争が激しくコストばかりが膨らむ一方で、なかなか顧客の獲得に繋がらないといった悩みも少なくはありません。
そのような中、新たなアプローチ方法として注目されるのが移動販売車による商品、サービスの提供です。
今回の記事では、今、移動販売ビジネスに乗り出す大手企業の画期的な活用例を紹介しながら、ファッショントラックやサービストラックの将来性について紹介します。
新たな販路を築きたい、ファンを増やして売り上げアップにつなげたいという方は必見です。
顧客を逃すWeb広告やSNSに偏ったアプローチ
新しい顧客との接点を増やしたい、まだアプローチできていない顧客の層に自分の商品やサービスを知ってもらいたいという時に、どのような方法が考えられるでしょうか。
そのような時に、Web広告やWebサイトの充実、SNS運用などに力を入れるのも1つの手段です。
今では、こうしたWeb集客のツールを提供する会社も数多くあり、WebサイトやSNSアカウントの運用を代行してくれるサービスもあるほど、WebマーケティングやWeb集客は一般化してきたと言えます。
一方で、こうしたWeb集客は競争が激化してきているのも現状で、なかなかファンの獲得や売り上げに繋がらず、苦戦することも少なくありません。
コストや労力をかけて、多くの人の目に触れるようWeb広告に力を入れているのに、集客や売り上げアップに繋がらないのは、なぜでしょうか。
増加するネット広告への嫌悪感
WebコンテンツやWeb広告に力を入れているのに、なかなか新規の顧客獲得に繋がらない理由はいくつか考えられます。
例えば、
- 取り扱っている商品やサービスと各SNSとの相性が良くない
- ターゲットとなる顧客の層には届いていない
- 商品やサービスの魅力がWebで伝わりづらい
これらは、工夫次第で改善も可能でしょう。
しかし、問題はこうしたWebマーケティングに頼りすぎているという点であるのかもしれません。
特にネットの広告に関しては、嫌悪感を抱く方も多いのが現状です。
メールをチェックするたびに表示されるショッピングサイトの広告、Webの記事の間に表示される関連サイトの広告、SNSのタイムラインの間に表示される広告など、繰り返し表示される広告に嫌気がさしたことがある方は多いのではないでしょうか。
一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の調査でも、かなりのPC、スマホユーザーがネット広告に対して、「しつこい」、「不快」、「煩わしい」とマイナスのイメージを抱いていることが明らかになっています。
※「2019年インターネット広告に関するユーザー意識調査」調査結果 (jiaa.org)のデータより作成
新規顧客やファンを増やすためにコストをかけたWebマーケティング戦略が、これでは顧客を逃すだけでなく、場合によっては企業のイメージダウンにもつながりかねません。
Web集客は、場所や時間の制限がなく、効率的にアプローチできるのが魅力的であると言えます。
しかし、上記のデータでも示されているように、こうしたSNSやWeb広告に偏ったアプローチだけでは本当に顧客の心をつかむのが難しいと言えそうです。
では、どうすれば、潜在顧客にアプローチし、売り上げを伸ばすことができるのでしょうか。
移動販売ビジネスが新たな販路を広げる!
そのような中で、今、新しいビジネスの形態として注目されているのがワゴンやファッショントラック、サービストラックを使った移動販売です。
移動販売というと、お弁当屋クレープを売るキッチンカーのイメージや、個人が小さくビジネスを展開するのに便利というイメージがあるかもしれませんが、実は、今、大手企業が商品やサービスを広く展開する方法として注目を集めています。
新たな販路を切り開いた有名企業の成功例は、きっとご自身のビジネスで新規顧客を獲得したり、売り上げを伸ばしたりするためのヒントになるはずです。
以降では、良く知られた有名ブランドによるファッショントラックやサービストラックの活用方法をご紹介します。
地域の課題を解決する無印良品の移動販売
無印良品というと全国の商業施設にテナントを出しているイメージがあるかもしれませんが、一部地域で移動販売を実施しています。
その始まりは、2019年7月、山形県酒田市と「地域発展を目指すパートナーシップ協定」でした。
無印良品のこのプロジェクトは、「暮らしやすく住みやすい持続可能な地域づくり」に向けて、移動販売ビジネスを通じて、地域の人と対話し、地域課題の解決を目指しています。
特徴は、バス停のように停留所を設け、時刻表を事前に発行し、ある時間に決まった地域に停車することです。
こうすることで、毎週〇曜日のこの時間に無印良品の移動販売車が来る、と地元の人にも認知されるようになります。
さらに、商品のラインナップを定期的に変更しているのも、買い物を楽しんでもらえる工夫と言えます。
出典:【くらしラボ酒田】8月の運行表 | 無印良品 (muji.com)
そのような行政や地域の人々と協力したプロジェクトは、地元の人からの信頼を得ています。
人口減少や少子高齢化を背景に、地域によっては流通機能や交通網が十分でなく、いわゆる「買い物弱者」への対策が必要とされるところもあります。
お客様の来店を待つのではなく自ら会いに行く。
こうした社会問題を解決することにも一役買っている無印良品の取り組みは、地域住民はもちろん、多くの人の心をつかみファンを増やしていると言えるでしょう。
あなたの街を巡回します!メガネスーパーの移動式店舗
メガネやコンタクトレンズの販売で知られるメガネスーパーも、移動販売店舗があることをご存じでしょうか。
メガネスーパーは2016年8月からメガネと補聴器の出張訪問サービスを本格始動しており、高齢者や病気で来店が難しい人のために、ご自宅、介護施設、病院に訪問しており、本人やその家族、介護や医療関係者の方から好評を得ています。
そのような背景から2020年1月に導入したのがサービストラックです。
特徴として、店舗と変わらない最先端の視力検査機材を設置しており、メガネの購入はもちろん、調整や修理といった店舗同様のサービスが受けられることです。
そして、出張費3,000~で自宅の近くまで呼ぶことができるのも、外出が難しい方や多忙な方にとっては魅力的なサービスと言えます。
出典:移動式店舗があなたの街を巡回します!|メガネスーパー 眼鏡(めがね、メガネ),コンタクト,サングラス,補聴器販売 (meganesuper.co.jp)
無印良品と同じく、テナント出店から移動販売車の活用に乗り出したメガネスーパー。
お客様の課題解決を目指すこのサービスが、新たな顧客を獲得しファンを増やしているといえるでしょう。
サービストラックで新たな価値を提供する不動産3社
無印良品やメガネスーパーは店舗から移動販売に販路を広げた例ですが、最近では不動産会社もファッショントラックやサービストラックを活用するケースが増えてきています。
不動産と移動販売とは一見全く別の業界のように思えるかもしれませんが、いったいどのようにファッショントラックやサービストラックを活用しているのでしょうか。
そこで以降では、三井不動産、三菱地所、野村不動産の3社に注目し、それぞれがどのような目的で、どのような方法で売り上げを伸ばしているかを紹介します。
効率的に売り上げを伸ばす三井不動産の移動販売ビジネス
三井不動産では街で暮らす人々に新たな体験価値を提供することを目的に、移動販売店舗のプロジェクトを始動しました。
出典:三井不動産 | 「移動商業店舗」プロジェクト始動 (mitsuifudosan.co.jp)
着目したのは、これまで自社で運営してきた様々な不動産において、ユーザーが場所や時間帯により異なる買い物やサービスのニーズを抱いていることでした。
そこで、移動販売ビジネスを通じて、自宅やオフィスといった身近な場所で、リアルかつ気軽な買い物体験と、思いがけない魅力的なコンテンツ(店舗)と出会える体験の創出に乗り出したのです。
特徴的なのは、様々な業種や店舗と手を組み、場所や時間帯によって異なる人々のニーズに合わせてサービスを提供している点です。
例えば、ランチの時間帯にはビルや駐車場で飲食を提供し、夜の時間帯には商業施設や住宅地で仕事帰りの人たちが1日の疲れを癒せるよう整体サービスを提供するなど、消費者ニーズをとらえた価値提供をしています。
出典:三井不動産 | 「移動商業店舗」プロジェクト始動 (mitsuifudosan.co.jp)
このように時間帯と場所によって変わる顧客のニーズに合わせたサービスの提供は、利用者とサービスを提供する店舗側と双方にメリットをもたらしています。
居住者にとっては、住宅の近くに様々なお店が来てくれることで生活の利便性が高まったり、新しいお店との出会いを通じて買い物体験を楽しんだりできます。そして出店店舗にとっては、新規顧客の獲得に繋がったり、売り上げだけでなくプロモーションとしても役立ったりしているのです。
店舗とスペースをマッチングさせる三井不動産のプロジェクトは消費者と店舗の新たな出会いの場を創出し、住みやすい街づくりにも貢献していると言えるでしょう。
マンション住民に新しいショッピング体験を提供する三菱地所の移動販売ビジネス
続いての不動産によるファッショントラック、サービストラックによる活用例は三菱地所です。
三菱地所は、モビリティビジネス・プラットフォームを展開するメロウとともに、コロナ禍で高まった家庭での食事需要に対応するため、自社の管理するマンションにフードトラックを導入しました。
特徴は、居住者の生活スタイルに合わせた飲食販売です。
例えば、ご飯は自宅で用意できるので、おかずのみ欲しいという家庭の要望に応え、おかずのみのアラカルとメニューにも対応しています。
出典:三菱地所/マンションに「移動販売車」鮮魚、青果など専門店商品も | 流通ニュース (ryutsuu.biz)
利用者からは、忙しいときにすぐにご飯が買える利便性や、普段家庭ではつくらない料理を楽しめるという新鮮さが好評を得ています。
このように、暮らしを便利にしてくれる三菱地所の移動販売ビジネスは、居住者の満足度を高めることにも一役買っていると言えるでしょう。
今後は、ベーカリーや生花店、フレグランスショップなど、フードトラックに限らず様々な店がラインナップに加わり、移動販売サービスの拡大が期待されています。
変化する飲食ニーズに対応した野村不動産の移動販売ビジネス
最後にご紹介するのは野村不動産による移動販売車の活用例です。
野村不動産は、人気の飲食店を集めたグルメタワー「GEMS(ジェムズ)」を運営しています。
移動販売ビジネスを始めた背景は、前述した三菱地所と同様、新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅勤務やテレワークが増加し、内食のニーズが高まったことにありました。
外食から内食にニーズが高まることは、外食産業にとっては大きなダメージですが、移動販売ビジネスはこのような状況の中でも販路を広げることができます。
野村不動産では、その場で最終仕上げ・販売をしてくれる移動販売代行サービスを利用することで、GEMSに直接来店しない顧客に対しても出来立ての料理を提供することを可能にしています。
また、1オーダーでGEMS内にある複数店舗から好きな料理を発注できるという点も野村不動産の移動販売ビジネスの特徴です。
複数人で食事に行く場合、「私はイタリアンが食べたい」、「私は中華がいい」というように、その時に食べたいものが人によって異なることはよくありますが、この移動販売ビジネスでは各人が好きなものを選べる点で、こうした課題の解決になっているともいえるでしょう。
ファッショントラック・サービストラックで新規顧客の心をつかもう!
以上、無印良品、メガネスーパー、不動産会社3社が乗り出した移動販売ビジネスについて紹介しました。
これらは異なる業界でありながら、ファッショントラックやサービストラックの活用を通じて共通した成果を上げています。
- お客様の来店を待つのではなく、自ら会いに行くという姿勢で信頼を獲得し、新規顧客やファンを増やしている
- 新しい買い物体験という価値を顧客に提供している
- 顧客や地域の課題を解決しながら、顧客満足度を高めている
また、新しいビジネスの形態である移動販売車による商品やサービスの提供は他者との差別化を図る戦略であり、これまでにない顧客層にアプローチすることで売り上げを増やすことも期待できるでしょう。
飲食だけでなく、ファッション、雑貨、地方の特産品、ネイル、マッサージ、PR、ホテルなど、移動販売車で提供できるコンテンツは無限大です。
アイディア次第で様々に活用できるファッショントラックやサービストラックをご自身の会社のビジネスでもぜひ試してみてはいかがでしょうか。